2004年11月8日(月)
9月25日、26日の2日間に渡り開催された「フォーラム顔学2004」第9回日本顔学会大会についてです。
過去に東京以外で開催された鹿児島と新潟の「フォーラム顔学」は足を運ぶことが出来ませんでしたが、今回は東京から比較的近い名古屋での開催だったので参加することにしました。
今回の個人的な目玉は何と言っても【デモンストレーションと特別企画】の似顔絵。
自分の似顔絵を描いてもらうことは趣味のひとつなんですが、ここ数年は忙しく去年の1月から描いてもらってなかったので、似顔絵を描いてもらうために名古屋まで行ってきたと言っても過言ではありません。
前日の24日にイラストレーターのラジカル鈴木さんと一緒に名古屋入りしたのですが、食事している時に「今回はいろんな似顔絵アーティストの人が似顔絵を描くみたいだから、ラジカルさんも似顔絵を手描きで描いたらどうですか?スケッチブックとマジックを用意していただいて。ポスターの前でイラストの解説をしてるだけだと面白くないでしょ」と話したところ、本人も乗り気で急遽「ラジカル鈴木の特別似顔絵LIVE」が行われることになりました。
今年も昨年に引き続き、顔画像に関係する工学系の話が多かったので、今回は特に印象に残った件のみを整理して振り返ります。
【ラジカル鈴木の顔ギャラリ】
似顔絵を描くことは急遽決まったので、椅子やテーブルは無く、ラジカルさんが雑誌で連載中の女優の似顔絵を集めたポスターの前で、立ったままで似顔絵を描くことになったのですが、似顔絵を描き上げるスピードはとても速く、瞬時に特徴を捉えていました。
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私がラジカル鈴木さんに描いてもらった似顔絵です。
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友人じゃなかったら怒りだしそうな似顔絵ですが(笑)、さすがに何度も会っているだけあってよく見ています。特徴を捉えているだけではなく、たぶん本人の知らないところでこういう表情もしているのでしょう。ラジカルさんだからこそ描けた似顔絵です。これも私の顔の一つで、私の一面をよく写し出した似顔絵だと思います。
日本を代表する似顔絵アーティストの一人である、星の子プロダクションの小河原智子さんにこの似顔絵を見せたところ「一度この似顔絵を見てからは、もうこの似顔絵の顔にしか見えなくなった(笑)。この似顔絵を見てしまった以上、私はもう池袋さんの似顔絵を描けないわ(笑)」とおっしゃっていました。
※ラジカルさんに似顔絵を描いてもらうのは長年の夢だったのですが、次回はラジカルテイストを活かした本来のデジタルアートで格好良く描いて欲しいと思います。
【大岡立の似顔絵広場】
大岡立さんは、第9回週刊朝日似顔絵大賞受賞した名古屋在住の似顔絵作家で、今回の「フォーラム顔学2004第9回日本顔学会大会」の実行委員も務めていました。
私が大岡立さんに描いてもらった似顔絵です。
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水彩画で描かれたのもありますが、目が幼稚園の時に描いてもらった似顔絵(水彩画)と同じで驚きました。
幼稚園の頃の可愛かった面影は無くなり、他の部分は全くと言っていいほど顔が変わってしまいましたが、目が同じだったことで、心の部分は純粋で変わっていないのだと嬉しかったです。
【南芳高の似顔絵コーナー】
南芳高さんは顔学会の常連で、いつも懇親会で似顔絵を描いて場を盛り上げていらっしゃいます。私も2001年のフォーラム顔学で一度描いていただいているんですが、3年間で私の顔がどう変わったかを知りたくて今年も描いてもらうことにしました。

私が南芳高さんに描いてもらった似顔絵です。
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以前は肖像画に近いイメージでセピアっぽく描いていただいたのですが、今回はパステルを使ってアートっぽく仕上げていだたきました。マンガっぽく描かれたラジカル鈴木さんの似顔絵とは逆に、アートっぽく描かれた南芳高さんの似顔絵もまた、私の一面をよく写し出した似顔絵であると思います。
以下、一般演題発表・特別講演について。
※赤字が私の言葉です。
【カーデザインと顔】
トヨタ自動車(株) デザイン本部、グローバルデザイン統括部、布垣直昭さんによる特別講演。
子供の「あの車、怒ってる。」という一言を元に、
「人間は顔をつくりたがる。」
「人間は、何かを顔に見立てたがる。」
「顔を感じやすい。」
「自動車のデザインではフロント部を顔と呼ぶ。」
「車の魅力の中で顔は大事な役割を占めている。」
「顔が気に入らないだけで車全体の評価が下がる。」
と、まず車の顔の重要性が語られ、次に
「目(ヘッドランプ)は顔デザインの主役」
「口や鼻に相当する部分があると表情が出過ぎるので意図的にそれを避ける。」
そして、「目」が特別扱いの理由として、「顔として見た場合『目』がないとあまりにも無表情で個性のないものになってしまう。」「視線の定まらない車は、自信のない表情になってしまう。」ということが語られた。
9月中旬のプロ野球再編騒動の時に、私はマスコミからの取材に対して
「ライブドアの堀江社長はインタビューを受ける際、目の焦点が定まっていない。本気でプロ野球に参入しようと考えているとは思えない。」と答えていたのですが、
目(視線)が意思を感じさせるかどうかという部分では、私の観相学と共通していると思いました。
「ヘッドランプが丸い=可愛い。親しみやすい。」としてSIENTAを例に説明がありましたが、これも「丸みのある目の相は可愛く、親しみやすい」という観相学と共通している部分です。
これらは顔印象学と定義づけることも出来、アイラインを目の中央の上下に多くしたり、丸いメガネを掛けることによって可愛く、親しみやすい印象を与えることになります。
「あまりにも全体のバランスをとると普通になってお客さんが振り向いてくれない。」
「『美しいけど覚えられない顔』『くせがあるけど親しまれる顔』がある。」
「造形的すぎると個性がなくなる。」という説明もありましたが、これは芸能人の顔も一緒ですね。
調査によると「日本人は目の輪郭を注視する」「アメリカ人は瞳を注視する」という結果があり
「アメリカ人は目の瞳を見るのではないか?」「これは、単一民族国家と多民族国家の違いか?」という説明があった。
【人は一瞬の表情変化を覚えているか?】
平常顔→笑顔
両頬や口の周りに強い変化が見られる。
平常顔→怒り顔
両眉や鼻の脇、口の両脇に強い変化が見られる。
平常顔→驚き顔
両眉や鼻の周り、口の周りに強い変化が見られる。
【「歴史写真」における新たな人物比定方法の実践】
「謎の人物の写真」を元に検証。
人物比定に使えるデータベースとして1.歴史情報(肖像写真の撮影年代、肖像主の身分・職業、歴史的状況証拠等)、2.顔情報(顔の特徴、他人との類似点・相違点)があり、古写真データベースとしての1.写真の物理学的情報(紙質、写真技法等)や2.写真の付加情報(台紙等)、3.写真の被写体情報(装束等)から時代や身分を割り出し、その後「肖像情報データベース」を用いて、特徴が一致する顔の比較検証するという方法。
以前テレビ番組の企画で「『銅像』からその人物を特定できるか?」というのがあり、銅像から年齢や男女が分かるかという取材を受けたのですが(未収録)、その際に髪型や顔面積に対するパーツの比率等から推理したことを思い出しました。
【顔画像による主観年齢推定システムの提案】
実験結果(2)表情別
■男女とも笑い顔に対しての方が主観年齢が高い
・笑い顔の方が普通顔よりも若く見られる
・明るさが若さにすり替えられていると推測される
・心理的距離が近くなる
とにもかくにも笑顔、笑顔です!!
【対話型GAを用いた似顔絵作成におけるユーザー意思反映の検討〜顔部品選択・位置形状調節機能の導入〜】
昨年の発表を進化させたもの。
(今回、ユーザーの抱いている印象をより反映できるシステムの検討を行った)
●印象を反映できるシステムの検討
星の子プロダクション・似顔絵アーティストの小河原さんによると、顔が「似ている」というのには2つの場合がある。
1.顔部品の形や位置関係が似ている
2.かもし出される雰囲気が似ている
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1.顔部品の形に特徴を捉える(例:大きい目)
2.全体の雰囲気に特徴を捉える(例:眠そうな顔)
※人によってこれらを重視する度合いが違うので、「顔の雰囲気」と「顔部品の位置形状」を別々に操作できるシステムが必要。
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「対話型GAによる似顔絵進化機能」「顔部品選択・顔部品位置形状調節機能」の組み合わせによるシステム。
この2つの機能の間をいったり来たりすることで、顔部品の位置形状と全体の雰囲気の2つの方向から似せることができる。
今後の課題として「プロが描いたような質の似顔絵が誰にでも作成システムを目指す」とのこと。
来年以降はついに「色」や「髪」も導入されるようで非常に楽しみです。
「顔の雰囲気の特徴(※「〜そうな顔」「賢そうな顔」「几帳面そうな顔」「おおらかそうな顔」「怒ってそうな顔」「笑ってそうな顔」「明るそうな顔」「眠そうな顔」)」というのも、そもそも「顔部品の位置形状の特徴(※「額が広い」「眉間が狭い」「目と目の間が離れている」「眉が上がっている」「目が三日月型」「口角が上がっている」「目がタレている」)」によって作られる訳で、これは私の観相学における顔印象分析と同じである。
また、私は常々『誰にでも自分なりの観相術がある。』と言っているが、人間が瞬時に捉える人の顔の特徴は「顔の雰囲気」(印象)であることと、観相家は「顔部品の位置形状」の特徴を観て性格や特性を読みとることを考えると「似顔絵作成」において重要なポイントと「観相」において重要なポイントは似ていると感じた。
※私の観相学は「顔全体の印象」と「顔部品の位置形状の印象」「顔部品の位置形状の表現(≠印象)を読む※Face Reading」によって構成されている。