toggle
2018-10-16

馬場悠男(人類学):骨から探る人類史~思いやりの心を未来の子孫に向ける

日本顔学会元副会長で国立科学博物館名誉研究員の馬場悠男先生(日本人類学会元会長)の記事がありましたので紹介します。

ナショナルジオグラフィック日本版サイトの武蔵野美術大学教授(文化人類学)関野吉晴先生(カッコ内の肩書きは冒険家となっています)がナビゲーターを務める「科学者と考える 地球永住のアイデア」という連載の、第1回が「馬場悠男(人類学):骨から探る人類史~思いやりの心を未来の子孫に向ける」で、(提言編)、(対談編)の2回に分けて構成。

写真は第21回日本顔学会大会(フォーラム顔学2016)「表現する顔」@東京芸術大学で小河原 智子(株式会社星の子プロダクション)に似顔絵を描いてもらう馬場悠男先生とその似顔絵。

「想像共感能力」思いやりの心

 

第1回 馬場悠男(人類学):骨から探る人類史~思いやりの心を未来の子孫に向ける(提言編) | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

ぼくは人類の「想像共感能力」、つまり思いやりの心が、地球永住のカギになると考えています。

と最初に結論があります。

私の地球永住計画 の、

70億を超える人々の欲望を制御し、現代文明を崩壊させることなく安定的に縮小することができるかどうかは、創造改革能力を大いに発揮し、想像共感能力すなわち思いやりの心を現在の同朋だけでなく未来の同朋にまで拡げられるかにかかっている。つまり、自らを律し、祖先たちの自然と共存する慎ましやかな生活に戻ることだろう。具体的には、日本なら昭和初期、江戸時代、縄文時代などのモデルが考えられる。さらに、脳も身体も縮小しながら、原人としての石器文化を維持して100万年間も生き延びたホモ・フロレシエンシスという究極モデルもありうる。

と人類学の観点から提言されています。

「思いやりを発達させたホモ・サピエンスの子育て」

を、さらに進化させて、

家族ではない人への思いやりも(人類は皆家族だし、今の時代だけでなく未来を生きる人も皆家族)もてるようになれば、人類も新しい時代を作ることができるのではないでしょうか。

逆に現代は「思いやりを発達させたホモ・サピエンスの子育て」さえもなくなってきています。

逆に暴力的になった現代人?

初期猿人、猿人、原人、旧人、新人の人類の5段階の化石を調べると、人間らしさを示す4つの特徴の発達の仕方があった。

1 チンパンジーのような暴力性は、人類の誕生とともになくなりました。犬歯が急速に退化したことからうかがえます。

とのことですが、

最近の日本を見ていると精神的な暴力性、攻撃性が非常に高くなっているように感じます。

これも日本人から「思いやり」が退化したからなのかもしれません。
※戦後教育が大きく影響していると個人的には感じます。

初期猿人→猿人→原人→旧人→新人ときて、新人(現代人)から「思いやり」がなくなり、逆に「暴力性」が芽生えてくるなんて変な話です。

少欲知足と自然との共生こそが人類が地球に暮らすカギ

第1回 馬場悠男(人類学):骨から探る人類史~思いやりの心を未来の子孫に向ける(対談編) | ナショナルジオグラフィック日本版サイト

この関野先生との(対談編)で馬場先生が言う

日本列島は未来永劫農耕が可能な理想郷です。山があるから雨が降る。火山があるからミネラル豊富な土壌が生まれます。四季の変化があって、多種多様な動植物がいます。海産資源も豊富です。ですから、人口を減らして7000万人ぐらいにすれば自給自足できるわけです。しかも化石燃料の消費を10分の1ぐらいに落として明治から大正時代と同じくらいにすれば、ずっとここで生きることができる。そんなモデルを私たちが作って世界に提案することができれば、22世紀の人類から感謝されるかもしれません。

「人口を減らして7000万人ぐらいにすれば」っていう部分は、ちょっと考える部分ではありますが、 第5回HC塾「情報文明を人類史の枠組みのもとで1000年単位で俯瞰する」で、 原島博先生も似たようなお話をされていたのを思い出しました。

大量生産、大量消費のアメリカに代表される経済中心の社会は行き詰まる。

人間はそのような生活から「人間らしい生活」に。

そのモデルを作れるのは日本かもしれない。

経済的には中国にもインドにも抜かれたけども、だからこそ経済発展のその先が考えられる。

と。

対談相手の関野先生の

ヒンドゥー教の神様と日本の伝統的な神様はよく似ていて、人間に恵みを与えてくれたり、懲らしめたりしますが、自然もそうですよね。自然がなければわれわれは生きていけない。でも時々懲らしめに来るんです。台風とか地震とか。それはそういうものだと思っていて、それをぼくは崇めています。感謝もしています。畏れてもいます。それがたぶん欲望を抑えるんじゃないか。

エチオピアのアファールで出会ったイスラム教徒の少数民族が200頭ぐらいのラクダやロバや山羊を飼っていて、「たくさん増えたらいいですね」と言ったら「いや、これでいいんです。アラーから授かったものだから、大切に育てるのが私たちの役目です」と言われました。自然や神を畏れ、謙虚な心を持てば、孫やひ孫にちゃんとした生態系を残せるんですよ。

っていう部分も最近の自然災害から日本人が学んだことのはずです。

仏教にも通ずる部分で「少欲知足」

足るを知る、欲張らない、貪らない生き方ことが大切です。


第21回日本顔学会大会(フォーラム顔学2016)「表現する顔」@東京芸術大学で馬場悠男先生が出展していた作品「自分の顔の復元」。

 

 

関連記事