『刺青絵師 毛利清二 刺青部屋から覗いた日本映画秘史』山本芳美、原田麻衣 著(青土社)を読んで
化粧文化研究者ネットワークでお世話になっている山本芳美先生(都留文科大学教授 文化人類学者)の新刊が今年3月末に青土社より出版されました。
『刺青絵師 毛利清二 刺青部屋から覗いた日本映画秘史』山本芳美、原田麻衣 著(青土社)
原田麻衣さん(京都大学大学院人間・環境学研究科博士後期課程/東映太秦映画村・映画図書室学芸員)との共著になります。
刺青絵師 毛利清二さんについてはこちらを。
「東映・刺青絵師 毛利清二氏に聞く『俳優に刺青を描く』とは」第66回研究会
【顔面学講座㉘】「毛利清二の世界 映画とテレビドラマを彩る刺青展」京都・おもちゃ映画ミュージアム
これらの集大成が書籍として一冊になりました。
『昭和残依伝』、『遠山の金さん』、『極道の妻たち』ー
刺青を描く”仕事の舞台裏
東映の映画やドラマで鮮烈な印象を残す刺青の数々。その影には「刺青絵師」と呼ばれる職人の存在があった。
京都撮影所の一角に構えた「刺青部屋」で名だたる俳優の肌に向き合い、80歳まで絵筆を振るいつづけたパイオニアが、自らの仕事を余すところなく語る。
帯より。
目次
まえがき
第一章 刺青を描く、映画をつくる——俳優に刺青(すみ)を描く(流す)方法
第一回のインタビュー点描
刺青を描く
図案を決めるのは私
道具について
いよいよ、撮影
メイクでも仕事
刺青と演技
『徳川いれずみ師 責め地獄』のエピソード
さまざまな「本職」の人々と映画
再現——テレビ時代劇「遠山の金さん」撮影の一日
刺青の落とし方
第二章 俳優と生きる、撮影所を生きる――スターたちとの交遊
藤純子(現:富司純子)さん——京撮の挑戦、京撮の変化
鶴田浩二さん——笑いあり涙ありの「鶴の一声」
美空ひばりさん——夜な夜な遊んだ「ひばり御殿」
高倉健さん——東映任俠・やくざ映画時代を駆け抜けた一〇年
若山富三郎さん——刺青好きの名役者
北大路欣也さん——俳優会館での刺青裏話
松方弘樹さん——裏街道をいくお兄ちゃん
渡瀬恒彦さん——生粋の東映俳優
高島礼子さん——一人前になった「観音菩薩」
渡辺謙さん——映画最後の仕事
コラム 俳優・高橋英樹さんに聞いた「刺青」を描かれること
第三章 刺青絵師まで、刺青絵師のあとで——毛利清二のライフヒストリー
繊維会社に入る
東映京都撮影所に入所
芸名の由来と結婚
近衛十四郎の付き人時代
大部屋俳優の生活
東映歌舞伎のドタバタ
ロケの楽しみ
テレビプロの仕事と組合活動
やくざ映画全盛時代の京都撮影所
サラリーマン「森清二」
日本アカデミー賞特別賞と幻の映画企画
元気の源はラブの散歩
解説1 刺青が物語を駆動する——「映画的刺青」のナラトロジー 原田麻衣
解説2 時代劇・任俠・実録——東映と刺青映画の三〇年史 山本芳美
解説3 刺青映画・刺青絵師の変遷と日本社会 山本芳美
あとがき——毛利清三の謎
注
毛利清二 略年譜
フィルモグラフィー
図版クレジット
青土社 『刺青絵師 毛利清二-刺青部屋から覗いた日本映画秘史-』山本芳美、原田麻衣 著 より。
東映株式会社京都撮影所にある東映太秦映画村・映画図書室の協力を得て「刺青絵師」として長年活躍してきた毛利清二さんに45時間以上にわたってインタビューした内容を元に再構成。
毛利さんの刺青下絵だけでなく、東映映画名作、名シーンの図版(鶴田浩二、岩下志麻、仲代達矢など)もあります。
第二章の「スターたちとの交遊」の以上に、毛利さんの人生に焦点を当てた「第三章 刺青絵師まで、刺青絵師のあとで——毛利清二のライフヒストリー」に読み応えがありました。
映画の夢を壊さない
以下、個人的に印象に残ったワードとフレーズ。
映画の夢を壊さない
学校教育中心になってしまったせいで、「人に聞けばすぐに教えてくれる」という感性がまかり通るようになってしまった。
高倉健にもらった帽子とサングラス
夕方5時過ぎに水分を入れると、酒がまずくなる
初期の肩掛け携帯電話
美空ひばりの「ひばり御殿」
健さんとは年齢も一緒、東映に入った年も一緒
コーヒー好きの高倉健
東映に行ったら「森」が5人もいた
奥様との出会いは?
楽焼屋の店主
ナショナル祭り
脱糞
読後に最も印象に残ったのは、毛利さんの職人意識です。
(職人気質や職人肌というのとはちょっとニュアンスが違う)
芸能がテレビバラエティ中心になる前の、映画を中心とした芸能界で生きてきた職人の物語。
映画史に残る1冊です。
ぜひ、読んでみてください。
『刺青絵師 毛利清二 刺青部屋から覗いた日本映画秘史』山本芳美、原田麻衣 著(青土社)
5月18日「京都のおもちゃ映画ミュージアム」で出版記念イベント開催
そして、5月18日(日)午後6時~7時に今年移転したばかりの新しい「京都のおもちゃ映画ミュージアム」で出版記念でトークイベントが開催されます。
新刊書籍についての解説、「読みどころ」トーク(山本・原田)、展覧会の裏話、スペシャルゲストを交えてのトーク、著者サイン会+書籍・グッズ販売など。
詳しくはこちらをご覧ください。
5月18日、刺青絵師毛利清二さんをテーマにトークイベント|インフォメーション|新着情報|おもちゃ映画ミュージアム