2003年6月30日(月)
第23回 日本顔学会イブニングセミナートークセッション『大顔展』ヴィジュアルとキャラクターの出来るまで〜「大顔展」ポスターイラストレーターに聞く〜に参加してきました。
講演者はイラストレーターのラジカル鈴木さん。
実はラジカル鈴木さんは友人で、私がずっとイブニングセミナーに参加していることもあり(数えてみたら2000年1月の第15回から参加していて、2000年11月の第17回イブニングセミナーからは今回まで皆勤賞でした)、セミナーの開始30分前に、いっしょに今回の聞き手である原島博先生(日本顔学会理事)のオフィスに打ち合わせに行きました。
結局、打ち合わせは全くせず(笑)(※「ぶっつけ本番でいいよね」と言う確認と、資料を見せるのにプロジェクターを使うという確認のみ)、原島先生の小学生時代の絵日記を見せていただいたり(小学生とは思えないほどの絵の才能で驚きました。ぜひ、今からまた描き始めて欲しいです!)、昔の顔学会の資料を見せていただいたりしました。
さて、トークセッションではアートに対する考え方や創作におけるポイントもお話していただきましたが、ここでは顔に関することについて振り返りたいと思います。
※赤字が私の言葉です。
【カワイイ顔とカワイクない顔の境界はどこだ?!似顔絵のつくり方】
ラジカルさんのキャラクターを元に、パーツをいろいろと変形させてその印象を検証しました。
絵を見せて紹介できないのが残念ですが、「輪郭が縦長になるほど大人っぽく見える。」「瞳を小さくすると若干コワイ顔に。」「口を一文字に横長にすると微笑んでいない顔に。」「微笑みを消しほっぺの赤い部分をなくす(頬紅をとる)とキリリとした表情に。」など、元の絵と比較しながら解説してくれましたので非常に分かりやすかったです。
原島先生も「目と目の間を近くすると利口に見える。だけどあまり近づけると神経質に見える。」「眉は濃くして上げると意志が強く見える。」など、顔の造形によって違って見える印象をについて語っていました。
“顔の印象”はその人の感性的な側面が強く影響しますが、日本人がそれぞれの顔にいだく印象というのはあまり変わらないと思います。
個人的には、古くからの観相学で伝えられていた「○○が△△の顔だと□□だ。」というものは、こういった顔印象分析の要素が多く組み込まれたものだったと思っています。
「○○が△△の顔だと□□だ。」と言い切ってしまうのは問題があるかもしれませんが「○○が△△の顔だと□□に見える(見られる)。」(一般的な顔印象)ということを知っておいたほうが、コミュニケーションを潤滑にしていくのには良いと思います。
「美人かどうか(美しいと感じるかどうか)の境界線」では、美しいと感じる顔かどうかはバランスが大事で、パーツ一つ一つが良くてもバランスが悪いとカワイクない顔なるなど、微妙なところで決まってくるという説明がありました。
ただ、顔は左右対称(シンメトリー)なほうが美しく感じるが、完全に左右対称だと個性が無く造作的に見え、魅力が無くなるという話になり、事実ラジカルさんは「微妙に左右対称にしていない」ということでした。
「赤ちゃんは顔をよむ」(紀伊国屋書店)の著者であり、中央大学文学部心理学教室助教授の山口真美先生も「赤ちゃんは“左右対称の形をした物”は4,5ヶ月ですぐに飽きる。」とおっしゃっていました。
また、ラジカルさんのキャラクターの特徴として涙丘(るいきゅう※目頭の切れ目の部分)が、描かれているが、これは「他のパーツの大きさや距離が現実離れした顔でありながら、涙丘をしっかり描くことによってリアリティを出している」という解説がありました。
顔学会の会長で人類学が専門の香原志勢先生のお話だと「日本人は涙丘がハッキリ見える人が少ない。」「白人、黒人はほとんどの人が見える。」ということです。
私はこの涙丘も、人それぞれが感じる“顔印象”に関係があるのでは?と思いました。
【大顔展のポスターについて】
元々大顔展のポスターは2つ候補があり、採用されたものに決定したという裏話もありました。
これは大顔展の図録ですが、ポスターも同じイラストです。
原島先生は、この絵の良さについて「見つめられているから気になってしょうがない」「顔が途中で切れているのがいい。こちらを覗かれているように感じるし、逆にこちらは切れている部分がどうなっているか気になる。」という感想を述べられたのですが、この感性はさすがだと思いました。
【顔と性格 好きな顔 嫌いな顔】
はじめに案内されていた今回のトークセッションのタイトルが『顔と性格 好きな顔 嫌いな顔』だったこともあり、ラジカルさんの好きな顔についての質問もありました。
ラジカルさんは「丸顔が好き。」「離れ目が好き。」「ちょっとぼぉ〜としてるくらいのほうがカワイイ」と自分の好みを話したのですが、それはまさしくラジカルさんのキャラクターの顔と同じでした。
ちなみに香原先生のお話だと「目と目が離れているほど子供の顔」「子供は目と目の間の距離と鼻の幅がだいたい同じ。大人は鼻の幅のほうが広い。」ということで、「人間の頭蓋骨は、子供から大人へ成長する過程のだいたい12歳くらいで目と目の間が決まり、この部分はそれ以上広くなることはなく、他の部分(鼻から下の距離など)が広くなる。※特に男性は鼻から下が大きくなる。」と言うことでした。
私は「今週の顔 第149回 キアヌ・リーブスさん」で、「若い頃から比べると窪んで奥目になり、目と目の間も狭くなっていますので、かなり神経質な性格に変わったと思われます。」と書いていますが、目と目の間が狭く見えるようになることはあっても、実際に目と目の間が狭くなることはあり得ないと言うことです。
ちなみに日本人の目と目の間隔の平均は36mmだそうです。
質問コーナーでは「ラジカルさんの作品集の帯に『誰かに似ているあなたへ』と書かれていますが、ラジカルさん自身、自分は誰に似ていると思いますか?」と質問させていただきました。
これは、私が(普段は改まって言いにくいのでここで)「ラジカルさんは、手塚治虫先生と梶原一騎先生に似ている。ラジカルさんの顔は巨匠の顔だ。」と言いたかったというのもありますが(笑)
トークセッション終了後は、山口真美先生が偶然隣りの席に座っていたこともありご挨拶をさせていただきました。
実は先日ラジカルさんの事務所を訪れた際、一番はじめに先生の著書「赤ちゃんは顔をよむ(紀伊国屋書店)※表紙がラジカルさんのイラスト」が目に入り、すぐに購入したばかりでしたので驚きました。
また、日本を代表する似顔絵アーティストの一人である、星の子プロダクションの小河原智子さんもいらっしゃったので、ご挨拶させていただくと、私の顔を「すごくいいお顔をしてらっしゃる」と言っていただきました。
過去にも、観相学の権威、藤木相元先生にお会いした際も「いい顔だ」と誉めていただきましたし、私が観相家であることを話してないのに、香港の占い師や、日本のあるの占い師から「凄くいい人相だ!」と大絶賛されて驚いたことがあります。
顔の専門家が悪い顔では話になりませんので、これは大変嬉しいことです。
この時は小河原さんにも「いい顔だ」と言われたのに驚き言い忘れてしましたが、小河原さんも素晴らしい顔でした!
帰りはラジカルさんと食事をする予定だったのですが、ラジカルさんが原島先生から食事に誘われたので私も同席させていただきました。
日本顔学会会長の香原志勢先生も一緒で“顔学会の2大顔”を前に初めは緊張しましたが、お二人とも楽しい話を聞かせてくださり、緊張がほぐれました。
また、大顔展の裏話をお聞きするにつれ、先生方のご苦労があって大顔展が成功したのだと感じました。
改めて大顔展に関られた全ての方々に厚く感謝申し上げます。
今回の講演者、ラジカル鈴木さんの作品集「ラジカル鈴木作品集(新風舎)」は、インターネットから購入できます。
その他、ラジカル鈴木さんの情報は、ラジカル鈴木オフィシャルホームページ「Funky Radical World」をご覧ください。