Face Reading ふくろう流観相学 池袋絵意知
HOME
今週の顔
顔とは何か
プロフィール
メディア情報
お問い合わせ
ふくろう日記
似顔絵募集
THANKS

ふくろう日記

「フォーラム顔学2001」第6回日本顔学会大会

2001年10月10日(水)
10月6日、7日の2日間に渡り開催された「フォーラム顔学2001」第6回日本顔学会大会に参加してきました。
発表された演題は、口頭発表数19、ポスター発表数19の計38。そして特別講演が2つに、1日目の一般演題発表後には懇親会が行われ、初めてお会いした方とご挨拶させていただくことができるなどとても有意義な大会となりました。
どの発表も素晴らしかったのですが、今回は特に印象に残ったことについて紹介します。
※赤字は私の言葉です。

【女性の美観10年の変化 口の美は小さいほうから大きいほうへ】
顔の美醜観が時代とともに変化するのはいうまでもないが、「自分の顔で一番気に入っているところ、一番イヤなところ、それぞれの理由」という調査結果において、20歳代から30歳未満の女性は「大きい口」を美とし、30歳以上の世代では「小さい口」を美とする傾向が示された。
この理由として、女性が憧れるアイドルが映画女優から歌手に変わってきたのが原因ではないか(歌手の良く歌うので人は得ていて口が大きい)との質問があり、この演題を発表した村澤先生も「流行をもとに好き嫌いを判断しているので、今は浜崎あゆみさんの影響が強い」と答えていました。
私の考えでは、仕事など女性の社会進出が増え、外へ出ていく女性ほど魅力的で評価される時代だからこそ、より外向的で積極的にみえる大きな口が流行しているのではないかと思います。

【リハビリメイクの臨床的効果】
外観の醜状に悩む患者の社会復帰を促すことを目的としたリハビリメイクの効果が語られたのだが、その中でアニメやおとぎ話などで主人公は美人に描かれてハッピー、逆に悪い役は醜く描かれてアンハッピーというストーリーが多いため、自分の外観の醜状に悩む人は、自分の人生もアンハッピーになるのだと悩んでしまう。という言葉が印象に残った。
以前私がブラック・ジャック・ザ・カルテ「B・J症例検討会(著) 海拓舎」の中でブラック・ジャックを観相した際に、iモード「似顔絵占いFAO」のプロデューサーであり、漫画研究家であるザッパラスの安藤さんと話をして『誰にでも自分なりの観相術がある。特に漫画家の人は“顔”で登場人物の人間性を表現するため自然と身につけていて、僕らはみんなその“顔”の影響を受けているのではないか』という結論になり、物語を制作する側の責任感を感じたのだが、今回の話を聞きその思いを強くした。

【アニメとアイドル写真の顔の向きに関する考察】
アニメ、アイドルともに左側の顔が見える絵や写真が多い結果が出たのは、感情成分のよく出るといわれている左顔を表示する傾向を支持した。(右脳が感情成分をつかさどるので左側に感情成分がよく出るという説が支持されている)

【顔形態特徴とパーソナリティ特徴との関係】
顔形態指標による自己評定と他者評定には以下のようなものがあった。
眉間が広いほど外向的であると判断される。
目が大きいほど神経症的傾向であると判断され、目尻が上がっているほど外向的であると判断される。
下顔部が短い(狭い)ほど、神経症的傾向を高く判断される。
口幅が広いほど外向的と判断される。
大きな口=外向的
狭い鼻、短い下顎=神経症的
上がり目、目の長い間隔=外向的
縦長の目、短い顎先=神経質
顔形態と認知されたパーソナリティ
大きな口=おしゃべり、感情的に安定
短い顎=感情的に敏感
口はコミュニケーション性において注目度大

などがあり、<まとめ>として顔の形態特徴についての他人の認知は男女にとって異なる。また部位としては目と口唇部が注目されている。
しかし、ここで得られた関連性には、暗黙理に形成されたステレオタイプによる社会的な学習による可能性が考えられる。
顔形態指標による自己評定と他者評定には、古くからの観相学で言われていることと非常に似ているものが多かった。古くからの観相学は心理的側面から「そう見える」というステレオタイプなのだと言われているが、やはりこれも暗黙理に形成されたステレオタイプなのだろうか。よくしゃべる人(口を動かす人)は口が発達するだろうし、短い下顎や短い顎先は、咀嚼との関わりが深く脳とも関係があるのでそうとは思えないのだが。

【能面を用いた表情認知テストと怒り表出タイプの関係 男子高校生の事例検討】
表情を読みとれない人が増えたためコミュニケーションがとれなくなってきた。怒っている人が怒っていると分からないから怒りを増長させてしまうのではいか?それがイジメに繋がるなどの悪循環となっているのではないか?ということが発表された。
この話は非常に興味深かった。人類学の分野で研究されている「人間は顔を情報収集だけではなく、顔を情報発信として使って進化してきたのではないか?という仮説」から言うと顔から出ている情報発信を読みとれないということは、人間は退化しているのではないかと私は思いました。

【顔のシンメトリーと顎姿勢】
自然界の動物の顔は左右対称であるように、本来顔は左右対称である。人間の顔が左右対称性を崩していく原因の一つに顎姿勢の乱れからくる下顔面の不調和が考えられる。
歯を治し、口を治すことによって身体や心にも影響を与える。

【顎関節症と顔貌変化 2.顔貌写真が語る症状の変化】
顎関節症の発症には、環境因子として社会におけるストレス、家庭内で親の介護や子供、夫婦関係・嫁姑関係・病気等のストレスが、相当影響していることが多い。
こういった患者さんの悩みを聞いてあげると、他人に言うことによって楽になり、精神的によくなる。カウンセリングや自己暗示療法に際し、顔貌や開口状態の写真を示し、環境変化に伴う症状の軽快度を認識させるなど症状の変化を記録し観察・説明するのは、患者・術者双方によって有効な手段の一つである。

【有床義歯咬合高径回復の効果 口元・舌房】
ヒトは加齢と共に天然歯であっても摩耗・圧下等で咬合高径(かみ合わせの高さ)が低くなる。顔の加齢変化としては上下の長さが短くなると言われているが、顔の上層・中層はあまり変化せず、顔の下層の高さが大きく変化する。
これを義歯作製に際して回復させることの効果として
1.唇の上下巾が増して、一文字のクチビルが改善される。
2.口角が上がることによりスマイルラインがきれいになる(「への字」の口元の改善)
3.頤部が下がるため、頬が相対的に上がって(締まって)見える
4.上顎前歯列を後方に排列でき、前突感が改善される
5.声が明瞭になり、若くなる
6.イビキや睡眠時無呼吸が改善される
7.食塊を嚥下しやすくなる」
※動物はまず、口が出来てから鼻や目が出来たという進化の背景があるので、口が変われば顔全体が変わってくる。口元を変えれば顔全体が変わる。
唇を支えるのは歯。唇の形は歯並びによって変わる。への字口はかみ合わせが悪いからおきる。かみ合わせの高さを高くすると快適になる。

【現代の日本人の学生の顔は縄文顔か弥生顔か】
日本人の顔は縄文顔と弥生顔がみられ、現代人の顔は両者が混血した顔であるという。

【重大事件犯人の顔写真計測による司法精神医学への寄与】
とても興味深いデータを示しての発表ではありましたが、発表された結論だけを書くことにします。
充分計測に耐える良質な資料が得られれば、精神鑑定に際し顔の計測に基づく判別結果が、客観的、補足的な資料を提供する可能性を示した。ただし臨床的な資料との突き合わせによる検討を要するのは論を待たない。

【シワを隠すと私の気持ちが伝わらない】
一般に顔のシワは加齢に伴って増加するので、我々はシワをネガティブに捉え、化粧や手術によって見せなくすることに執着するが、表情表出に関与するシワまで隠してしまうと内的感情の豊かさを伝えることができなくなるとも言える。

【若く見せる効果の高いメーク品とその使用方法】
中高齢者のメークでは、ファンデーションを塗ることが年齢を若く見せる効果がもっとも高いことが明らかになった。ところがファンデーションを顔全体に均一に厚く塗布すると、現実には時間経過に伴い、目尻やもとの動きの大きな部位の化粧崩れがおこる。その結果、しわが目立つようになり、老けて見えると考えられる。
実験方法がファンデーション、アイメーク、リップカラーの組み合わせによるものだったので私は「若く見せる効果が一番高いのは眉を上がり気味にするメークでは?」と質問したのですが、あくまでもテクニックを必要としないメイクにおいて検討したとのことでした。

【若年成人女性における基本顔型の出現頻度】
典型的な四角顔、典型的な丸顔、典型的な逆三角形顔、そしてそれらを複合したコンビネーション形の4種類に分類して1997年から2001年まで調査した結果、典型的な丸顔は毎年かなりのパーセンテージで減っている。そしてコンビネーション形が徐々に増え、典型的な四角顔、典型的な逆三角形顔は少し減っている。元々典型的な逆三角形顔が一番出現率が高いのだが、2001年はコンビネーション形がそれに肩を並べるくらいまでになっていた。
※2001年の結果
Square(四角顔) 15.8%
Ovoid (丸顔)6.8%
Taper(逆三角顔) 38.6%
Combination(複合顔) 38.6%
最近の若い女性は逆三角形顔が増えていると思っていたのだが、元々逆三角形顔が高く微妙に出現率が減っているというのが意外だった。
ただ、これらは平均年齢24歳のデータということだったので、今の10代が成人になる頃にはまた逆三角形顔が増えると思われる。コンビネーションはこのまま平行線をたどり、最近の若い女性はジャンクフードとお菓子で育っているのでアゴが小さく、四角顔と丸顔は更に減るのではないか。


【顔の考古学 縄文・弥生・古墳】
縄文時代草創期から早期、10000年以上前の土偶には顔がない。これは顔よりも豊かな乳房とよく張った腰という、子供を産み育てるという役割の表現が優先されたため。顔を表現するようになるのはおよそ5000年前で、定住生活の高まりによって集団の規模が大きくなったり、よその村との人づきあいが活発化して、他者の認識をより深めることが背景にある。
人間の顔が他の動物よりもいろんな色やカタチをしているのは、こういった人づきあい(コミュニケーション)のためにそうなっていったのではないか。

【ブリューゲルの“顔”さがし 画面での役割について】

「イタリア・ルネサンスの画家は観者に好印象を与え、依頼者を満足させるために、像主を図像的にも、造形的にも理想化して描くことが多かった。とくに古典古代への憧憬を抱くルネサンス時代では、政治家は時には自分を古代の英雄に、学者や文人たちは古代の哲人に、上流婦人たちは古代の貞節の誉れ高い賢夫人になぞらえて、肖像画を描かせようとした。
西洋美術史で“顔”を論じる場合、まず肖像画の表現に注目しなければならない。しかし、画面の中でなんらかの役割を演じている民衆の“顔”について論じる意味では、16世紀中期フランドルで活躍したビーテル・ブリューゲルほど民衆の“顔”の表現に関心を抱いた画家はいない。」という解説があり、意志の強そうな顔や陰険な顔、賢そうな顔、悪人そうな顔を表現されており、
その顔の各パーツの描き方が興味深いものだった。
また、≪ネーデルラントの諺≫には百に近い諺が描写されているのだが、「悪魔をクッションの上で縛る女」は腕力が強そうに描かれていたり、「仔牛が溺れて穴をふさぐ」では悲嘆にくれた目、鼻は垂れ、口元は堅く結び、髪は後悔の念を示すように、後ろへ引っ張らてている。「水面に太陽が反射するのを我慢できない」は他人の幸福を羨む人物の諺だが、嫉妬深いこの男は神経質で痩身で表現するなど、ブリューゲルは激怒、悪企み、裏切り、後悔、嫉妬などのさまざまな感情をリアルに描いた。
上の【リハビリメイクの臨床的効果】のところでも書いたが、“顔”の絵で人間性や感情を表現すること、つまり顔の造形によってその人物がどういう人間であるかを伝える(知る)ということはいつの時代でも行われる自然な行為なのだ。そしてそういった積み重ねが今の「誰もが持っている自分なりの観相術」になっているのだと思う。
だからこそ、私のように顔を読む人間はよりいっそうの責任があるのだと。




懇親会では【顔をコピーする事は】を発表した千葉科学技術大学のJohnathon Johnさん(コピーアーティスト)と文化・文明はコピーの歴史であるということ、そして「コピーする事はクリエーションの課程である」についてお話させていただきました。先生の作品のポストカードもいただきました。
似顔絵師の南芳高さんには特別に似顔絵を描いていただきました。



南芳高さんに描いていただいた似顔絵


また、私が大ファンであるかづきれいこさんのスタジオKAZKIの方々、「顔面漂流記」(かもがわ出版)の著者でフリーライター、そしてユニークフェイス世話人の石井政之さん、日本顔学会評議委員でエッセイストの高戸ベラさん、国際パフォーマンス学会の森田育男さんにご挨拶をさせていただきました。
みなさん本当にありがとうございました。


バックナンバー

「今週の顔」2000年12月の総括
「王様のお夜食」と「開運!なんでも鑑定団」
日本顔学会セミナー『顔表情のロボットによる表出と自動認識の追求と応用』
「リハビリメイク」と「OLヴィジュアル系」
日本顔学会セミナー〜顔と歯科〜

悪人相をレッサーパンダ男を元に検証する。
日本顔学会 第10回公開シンポジウム
「今週の顔」2000年の総括
フェイシャルセラピストかづきれいこさんの講演他

日本顔学会第9回公開シンポジウム他

HOME | 今週の顔顔とは何かプロフィールメディア情報お問い合わせふくろう日記似顔絵募集THANKS
Copyright(C) IkebukuroH All rights reserved. Copyright(C) iDESiGN,Inc. All Rights Reserved.
このホームページの内容の一部または全部を無断で複製、転載することを禁じます。
ホームページに関するお問い合せは、こちらまでお願いします。webmaster@ikebukuroh.com