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2020-03-09

「毛髪再生医療 薄毛・脱毛治療の歴史と最前線」化粧文化研究者ネットワーク第52回研究会|顔訓13か条改訂?

新型コロナウイルスの影響で、3月13日(金)に京都で開催を予定していた「化粧文化研究者ネットワークの研究会」が中止になってしまいました。

そこで、溜まりに溜まったまだブログに書いていない「化粧文化研究者ネットワーク研究会について書いていこうと思います。

まずは、前々回の2019年9月13日(金)に開催された化粧文化研究者ネットワーク第52回研究会「毛髪再生医療 薄毛・脱毛治療の歴史と最前線」から。

 

この日は、週刊てりとりぃ:2019年10月25日(金)でも書いているように午前中は京阪百貨店守口店8階のNHK文化センターへ。

大阪から池袋絵意知です!「化粧文化研究者ネットワークと大阪樟蔭女子大学」

そして、

午後からは大阪樟蔭女子大学での化粧文化研究者ネットワーク第52回研究会に参加。

 

歴史ある校舎。

新しい校舎。北門近くの芳情館。

毛髪再生医療 薄毛・脱毛治療の歴史と最前線

講師:岸本治郎 先生
(株)資生堂 グローバルイノベーションセンター 再生医療開発室長

講演概要

薄毛、脱毛症は医療と美容の境界領域に位置付けられ、死に至るような重篤な疾患ではないが、性別を問わず社会生活に深刻な影響を及ぼす。その治療はQOL改善薬として、これまで育毛剤・発毛剤が医薬品、医薬部外品として開発され、最近では自家植毛の技術も確立されてきているが、侵襲性の低い、万人に効果のある満足度の高い治療法は未だに実現していない。本講では、近年、先進医療として注目されている再生医療技術の脱毛症治療への応用について、我々の取組み中心に概説したい。併せて、毛髪・薄毛に対する社会の認知や文化についても議論を試みたい。

講演者の岸本先生は、髪の毛を研究し続けて20年以上。日本における毛髪再生医療の第一人者です。

講演では再生医療だけでなく毛髪全般についてお話をうかがいました。

毛髪はビューティー、ヘアケア、容姿に大きな影響。美容の領域ではヘアカット、ヘアカラー、パーマ、その他いろいろ。

毛髪再生医療は、サイエンスとして確立された最先端の学問領域(発生生物学)である。

薄毛、脱毛症は、死に至るような重篤な疾患ではないが、外見が大きく変わるため、精神的な苦痛を伴う。

女性の場合は髪の毛が細くなるのも悩み。現代女性も毛が細くなっている。

壮年性脱毛症(AGA)の日本人男性の発症率は30代で20%、40代で30%、50代で40%。

実は薄毛の人も毛髪数は意外と変わらないというデータが示された。

本数が減っているのではなく1本1本が細くなっていて、太さが見た目に影響を与えている。

毛包組織は残っているが毛包がミニチュア化(細毛・産毛)化しているということだった。

植毛については、自毛を植える技術が開発されていて、後頭部の毛の残っているところをざっくり切り取って毛包を1本ずつ田植えのように注射で植えていく技術がある。

岸本先生がやろうとしている再生医療は6mmくらいの小さな皮膚組織から毛包を30本くらいをとり、細胞を培養して増やしてから、薄毛になっているところに増やすため質量ともに植毛とも違うということだった。

討議では、昔から言われるがワカメは髪にいいのか?とか(科学的根拠はない)、がん患者の女性にとっては乳房切除より脱毛のほうが苦痛という話(女の命とはよく言ったものです)など。

インディアンにはハゲがいない?

そして、私からは「アメリカインディアン(ネイティブアメリカン)やメキシコのインディオ、アマゾンに暮らす人達にハゲがいないと言われていて、私が今まで見てきた映像にもハゲの人はいなかったんですが、それについて知見がございましたら…」と質問をさせていただきました。

すると隣に座っていた半田まゆみ先生が「そうなんですよ!彼ら禿げないし白髪にもならないんです!」と。

※半田先生はネイティブアメリカンの人と交流があり彼らの文化に詳しい人でした。

岸本先生の話でも「薄毛・脱毛の原因は遺伝とストレス(長期におけるストレスが最もよくない)」とあったんですが、半田先生からは「彼らは神の概念が違っていてストレスがないから?」なんていう話も出ました。

美しいハゲを人生の誇りとしよう

また、「ハゲという表現は気にする人がいるから使わないほうがいいのではないか。テレビで芸人がよくハゲ、ハゲ言っているが」という話も。

私は、

原島博先生の「顔訓13か条」にある『美しいシワと美しいハゲを人生の誇りとしよう』も『美しいシワと美しい薄毛を人生の誇りとしよう』に変えなきゃならないかな?(笑)」と笑いを入れたりしたのですが…

もっと厳密に言うと「薄毛」と「禿げ」は違いますし、顔についても表現がどんどん難しくなっているなと思うこのごろです。

他人に「ハゲ」と言うのはよくないですが、「美しいハゲを人生の誇りとしよう」と思っている人が自分のことを「ハゲ」というのはありだと思います。

あまり言葉狩りに走るのもよくないですし。

「美しいシワと美しいハゲを人生の誇りとしよう」を、「美しい線と美しい薄毛と無毛を人生の誇りとしよう」にしたらもはや顔訓ではなくなります。

現代社会というのは、経済、ビジネス最優先の世の中です。

自らのビジネスのために、ハゲを悪いものだとテレビ雑誌等でさんざん啓蒙活動を行うハゲビジネス(育毛、発毛、植毛、カツラ)によるメディア戦略の弊害ですね。

 

ハゲは個性、ハゲは進化?

男性の壮年性脱毛は「立派な個性」のはずです。

全身が毛に覆われてる他の哺乳類と違って、進化によってほぼ頭髪だけ毛を残したヒトなのに、なぜヒトの男の約半数が壮年期に頭髪が抜けるようになるのか?

日光から守るために髪の毛があるはずなのに本当に不思議です。

何か意味があって頭の毛が抜けるようになっていてこれも「進化」なのかな?とも思います。

髪の悩み、頭の悩み

私自身の話をすると、頭は7重苦なんです。

①縮毛、②絶壁、③猫っ毛、④つむじの位置が変、⑤怪我による傷ハゲが複数、⑥裾(襟元)が火傷で無毛、そして、⑦壮年性脱毛症。

子供の頃はくせ毛というより天然パーマがコンプレックスでしたし、中学生の時に丸坊主にしたら伸びてくる毛は完全に縮毛。

絶壁なのは丸坊主にしてから言われるようになったし、丸坊主にすると怪我による傷ハゲがよく目出つ。

つむじの位置が変だから短い髪型がなかなか決まらない。

同じく短くしていると子供の頃に負った火傷で裾の本来毛が生えているところが無毛になっていて、ちんちくりんな感じに。

壮年性脱毛症については、30際頃から額がどんどん後退してきて前髪の毛が少なくなってきました。

前から来るぶんには額が広くて知的に見えるのでまだいいですが、5年ほど前に後ろから撮影された写真で頭頂から後頭部にかけて薄くなっているのに気づきました。

この7重苦を全部カバーすることは到底無理で(今となっては縮毛は逆に活かせますが)、気にしないように、これも個性だと思って現状の髪型にしています。

スキンヘッドもいいのですが、今のイメージではないかな?

中学生の頃は、今スキンヘッドにしている“髪がある頃の”松山千春さんに似ていると言われたことがあるのですが。

話がどんどん広がる化粧文化研究者ネットワークの研究会

北山先生からは、過去には『ハゲを生きる―外見と男らしさの社会学』須長史生(著)勁草書房(1999年5月)という本もあった話。

また、最後は、

化粧品は動物実験しない、医療研究の場合は動物実験をせざるを得ない。

だが、世界的に見ると動物実験させない傾向が増えてきた。ベジタリアンと違ってヴィーガンの運動がある。ヴィーガンの主張では毛皮がもちろんシルクも蜂蜜もダメ。自分だけでなく人にも肉を食べさせない。動物の定義は?魚は?と社会全体を考える方向になって研究会は終わりました。

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